GIDに関する精神衛生に関する多くの研究は、影響を及ぼしうる心理学的または精神医学的問題に焦点を当てています。

4つのヨーロッパ諸国にまたがる大規模な研究によると、対象者の性同一性障害305人のうち、38%がなにかしらの精神的障害を持ち、感情障害(27%)、不安障害(17%)であったと報告されています。

薬物障害、摂食障害,および精神病性障害はより少なく,それぞれ16%,2%,1%と報告され、スウェーデンの後ろ向きコホート研究では、トランスジェンダーにおける重大な問題を抱えているほど、心理的または精神的問題の発生率が高くなります。

このような高い頻度は従来の研究報告で一貫して報告されています。いくつかの研究では、FTMと比較してMTFの精神病理学の有病率が高いことが報告されていますが、ある研究ではその逆も報告されています。

性別違和と自閉症

興味深いことに、感情障害、不安障害に加えて、最近、この分野における注目されていることは、トランスジェンダー者における「自閉症スペクトラム障害」または「自閉症」の存在です。

結論はまだ早すぎますが、現在利用可能なデータは、オランダの小児(204人)および英国の成人においては、一般集団と比較して、性の不快気分を伴う自閉症がより高い割合を示唆するようです。

英国の研究では、61人のFTMは一般の男女よりも自閉症指数スコアが高いデータが出ています。アスペルガー症候群と診断された125人の患者よりもスコアが低くく、これらのデータは、トランスジェンダーの自閉症の特徴は一般集団よりも高いかもしれませんが、自閉症スペクトラムの人々よりも低く、性的指向や性に依存していることを示唆しています。

ホルモン治療と精神症状

GID(107人)を対象にしたある研究では、不安、抑うつ、および精神病の症状と全体的な重症度および機能障害の測定値はすべて、性ホルモン治療開始後12ヵ月後に有意に低下しました。同様に別の研究でも、性ホルモン治療による有益な効果が報告されています。

ホルモン治療後に精神症状は改善するするのか?

またこの研究では、性ホルモン治療をしていないGIDと比較して、FTMではうつ症状は軽減するものの、MTFでは軽減しないことを見出しています。

ホルモン療法により、両性の身体不安レベルはいずれも減少しています。重要なことに、3、6、12カ月後、24カ月後の4つの時点では、性ホルモン治療後には、両者ともに抑欝症状、身体不安レベルおよび性の不快感が有意に低下していることと関係していると考えられます。

要約すると、性別に違和感があることは精神衛生上の問題、主に感情障害の増加が関連している可能性があり、うつ病や身体の不満を含む精神衛生に関連する精神症状は、時間とホルモン療法によって減少することを示すものです。

それにもかかわらず、性別違和の状態の人における最もな懸念材料は、切断、殴打、焼身自殺以外の自傷行為と同様に、自殺傾向(自殺思考、自殺未遂、自殺率)のリスクです。

これらの行動は、自分の感情を調節する不適応な人たちにより反映しているかもしれないし、外部または内部の圧力や社会的差別に反応した自己処罰を反映しているかもしれません。

GIDにおける自殺傾向

これらのハイリスクな行動のために、過去10年間で、GIDにおける自殺傾向および自殺以外の自己傷害の存在を評価する研究が急増し、サンプル数が着実に増加しています。

性別違和の状態にある人の生涯自殺率と自殺未遂率は驚くべきものであり、30%から81%に及びます (米国全体の自殺未遂の有病率)。その人口は4.6%と推定されています。自殺の有意な予測因子には、過去の虐待歴、性的虐待、抑うつなどがあります。

性転換前における自殺以外の自傷行為の割合は、全GID集団で38%と推定され、そのうちFTMで57.7%、MTFで26.2%であると報告されています。

別の研究では、自殺以外の自傷行為は19%の発生率で前者の研究に比べるとはるかに低かったと報告しています。両研究でFTMはMTFよりも自殺以外の自傷行為のリスクが高いことが明らかにされました。

これらの結果は、小児集団を対象とした研究でも同じような発生率で、小児および青年の性に対する不快感が強い場合に、自傷率が高いことが報告されており、この集団では生涯を通じて自殺傾向および自傷行動が顕著であることが示されています。

性転換後の自殺傾向および自殺以外の自傷行為を評価する長期データは少ないですが、依然として懸念の原因を示唆しています。

GIDの死亡率

大学のジェンダークリニックを受診したGID(1,331人)に関する研究データでは、追跡期間平均18.5年で、MTFの高い死亡率が示され、総死亡率は一般集団の平均より51%高く、一方、FTMは男性間の総死亡率および原因特異的死亡率は、一般集団男性の死亡率と有意差はなかったと報告しています。

※いわゆるGID、トランスジェンダーは、早死にするといううわさがあるらしいのですが、MTFに関していえば一般女性に比べると死亡率が高いのですが、FTMに関しては一般男性と死亡率は同じです。統計上の死亡率とは、病気、不慮の事故、自殺などを含む率です。

その死因は、心臓および肺の問題、新生物、HIV/AIDS、自殺でした。スウェーデンのある研究では、性転換後の自殺および自殺未遂による死亡も同様に懸念されています。なお自殺による死亡の発生率は1,000人年当たり2.7人、自殺企図の発生率は7.9人であったと報告しています。

特に、全米のトランスジェンダー差別調査では、トランスジェンダーの自殺未遂の有病率が41% と高く、これはLGB(レズビアンゲイバイセクシュアル)コミュニティで報告されている有病率の倍であり、米国では10%と推定されています。

性転換後であっても性別違和の状態にある人の自殺リスクがこのように高い場合には、診療所にいる性別違和の状態の人は自傷行為について評価されるだけでなく、長期的に監視する必要があります。

実際に注意しなければいけないことは、精神疾患としてではなく、性自認として性別に違和感があるという認識が必要です。

気分障害および感情障害の割合が高く、特に移行期の前には自殺傾向が高いことを考慮すると、臨床医は性別による不快気分だけでなく、相互に関連する心理的および/または精神的問題,ならびに性別による恐怖感に見せかけた心理的問題も診断できなければならないでしょう。

さらに、精神科医療提供者は、性別による不快感の診断および治療の基準に精通し、性転換移行過程全体およびその後の患者のケアができることが重要です。
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