MTFでも前立腺がんになる?

睾丸摘出したのちの前立腺がんは非常にまれである。エストロゲン治療を長く治療しているとなおさら前立腺がんになりにくい。睾丸摘出後、41年間女性化していたにもかかわらず、前立腺がんが発症した症例。

ケースレポート(症状、治療内容、経過)
60才、GID/MTFトランスジェンダー。最初に血尿の症状があった。19歳から女性ホルモン(エストロゲン)治療を開始。毎週エストロゲンを筋肉注射を5年間していたが、その後に、34才時に睾丸摘出し、その前まではプレマリン(2.5mg/日)を服用していた。

50~56才間は、プレマリン(1.25mg/日)を内服していたが、その後は入手が難しくなり、女性ホルモンの治療は中止した。家族に前立腺がんはいない。

造った膣からの膣診にて、大きい腫瘤が前立腺の前方に触れた。(※通常前立腺は、指で直腸から診察するが造膣しているので、そこから前立腺を触診できる)PSAは、240ng/mL; 以前にPSAは測定したことがない。

血中男性ホルモン(テストステロン)は、 44 ng/dL (1.5 nmol/L) (睾丸を摘出している場合:<50 ng/dL [1.7 nmol/L]) 。ホルモンレベルは、女性化した男性の濃度と同じで、テストステロンは、副腎皮質から分泌されている範囲内であった。

MRI検査での所見として、がんは膀胱に浸潤。生検では、がん細胞は、組織型がアデノカルチノーマで、アンドロゲン受容体陽性、エストロゲン受容体は陰性であった。

化学療法を35週間行い、プレマリン(1.25 mg/日)は継続した。治療6週間後、PSAは、77にまで下がった。抗男性ホルモン治療の間に、放射線療法も行っている。放射線療法後には、PSAが4.6にまで下がった。抗アンドロゲン治療終了35週目で、PSAは0.4になった。MRI検査でも腫瘍は小さくなっていた。

女性ホルモン治療しているMTFは、前立腺がんになりにくいはずだが…

アンドロゲン(男性ホルモンの総称)は、前立腺がんを促進させる要素なので、若いうちに睾丸摘出をしていると前立腺がんになりにくいとされている。
MTFの性別適合手術(SRS)は、一般的に前立腺の摘出は含まれないが、前立腺の病気はなりにくい。

ある報告では、平均年齢51~71才、エストロゲン治療期間15.8年、睾丸摘出後13.4年後のMTF9人を対象としたところ、超音波(エコー)と生検で調べてところ、前立腺は萎縮していた。

以前に報告されているMTFの前立腺がんは、50歳以降にエストロゲン治療を開始し、その後12年以内に前立腺がんの診断がつけられているが、今回の症例のMTFは、診断される前は、41年間女性化していたMTFであった。

アンドロゲン受容体が活発なこの患者では、放射線治療を行う前に抗アンドロゲン治療を行った。ジハイドロテストステロンに変換してしまうテストステロンを抑えるためにアンドロゲン受容体をブロックさせる薬と5-α還元酵素阻害剤が使われた。局所的な放射線療法は、抗アンドロゲンの反応の評価を見て行った。

今回のケースは、去勢してからの期間が長かったにもかかわらず、前立腺がんを発症した症例を報告した。抗アンドロゲン治療に対するPSAの反応は、前立腺がんの進行において、アンドロゲン受容体を阻害しているかどうかが評価できる。

19歳の時点で、すでに微小ながん組織が存在していたと否定はできないが、動物実験では、アンドロゲンがないと微小ながんがあっても進行が抑えられるとしている。

副腎から分泌されるアンドロゲンなどががん化を促進させた可能性もあるが、前立腺の診断前にテストステロン(男性ホルモン)がほとんどなく、エストロゲンに満たされたはずなのに、がん化してしまったのは結局、去勢後のとエストロゲンの役割はなんだったのか?が疑問が生じる。
※コメント
今回の医学論文も、結局若いうちからエストロゲン治療、睾丸摘出を受けていたにもかかわらず、それも40年の期間も!前立腺がんを発症してしまった症例でした。

ただ、しっくりこないのは、原因がわからないということです。一応、考察には、①19才の時にすでに微小ながん細胞があったのか?②副腎から分泌されるテストステロン(男性ホルモン;生物学的女性と同じ程度の量しか分泌されない量)が悪さをしている可能性があるとしています。

前立腺がんは、通常テストステロン(男性ホルモン)が原因とされていますが、必ずしもこのテストステロンだけの原因ではないことも報告されています。もしかして、男性ホルモンとはまったく関係のない原因で前立腺がんを発症した可能性もあるのかもしれません。

MTFの前立腺がん②
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☞海外医学論文
Prostate Cancer in a Transgender Woman 41 Years After Initiation of Feminization
JAMA. 2006;296(19):2312-2317