執筆者:性同一性障害(GID)学会認定医 大谷伸久

高齢者のFTMの変化の目的

高齢者のFTMの身体的変化の目的は、若年者のFTMと同様、男性化、そして、女性的特徴をなくすことです。薬物治療は、アンドロゲン(テストステロン)治療で、筋肉注射、ジェル、テープのさまざまな種類のタイプがあります。※日本国内では、テープが販売されていません。

テストステロン治療を開始する前に、少なくとも、違う間隔が空いた日に2回テストステロン濃度を測定するのがよいです。低濃度と基準になる値を知るとよいでしょう。

絶対に治療しない方がよいのは、心臓疾患で冠動脈疾患が不安定なひと。ヘマトクリットが55%以上も要注意です。=多血症

高齢者FTMの男性ホルモン治療

男性ホルモン剤には3種類の形態があります。筋肉注射、ジェル、パッチです。飲み薬は、お勧めではありません。なぜなら、まず最初に消化管で吸収され、最初にここで代謝されてしまい、生物学的活性化が乏しいとされます。
(あまり効かない)

肉体的男性化、声の低音化、クリトリスの肥大化、発毛などの効果が得られる濃度が必要です。ただし、これらに伴ってリスクに関しても知っておく必要があります。

高齢者FTMの男性ホルモン治療の身体への影響(副作用)

男性ホルモン治療は、心臓血管系にも影響します。静脈血栓、ヘマトクリット、ヘモグロビンが高くなり、血圧も高くなる傾向にあります。

また、男性ホルモン治療は、体重の増加、頭痛と同様に、高齢者でさえ、ニキビを生じます。

FTMにとっては、乳腺組織を取り除くまで乳がんの可能性はふつうの女性と同様に監視しないといけません。乳腺組織を取り除いても乳がんの可能性は、ふつうの男性と同様に絶対ならないわけではないので、注意が必要になります。
※胸オペ時には、男性と同じくらいのように、乳輪の直下は少し乳腺組織を残しています。

その他の重要な副作用として、骨密度が減ります。これは、骨粗鬆症になる可能性があります。

気分の変調もあります。性欲が増加するとともに、攻撃になりやすいこともあります。

男性ホルモン治療をしない治療

男性ホルモンを使わない治療もあります。メドロキシプロゲステロン、GnRHアンタゴニスト、5αreductase inhibitor、SSRIは、男性ホルモン治療の副作用を相殺してくるかもしれません。

プロゲスチンは、生理を止める作用があります。高齢者FTMには必要がないことが多いでしょう。すでに生理が止まって、閉経しているひともいるからです。

GnRHアンタゴニストは、婦人科疾患がないにもかかわらず、尿管から出血することがあります。

発毛が著しい場合は、フィナステリドを内服するとゆっくりとした発毛が得られます。男性型脱毛については、フェナステリドやミノキシジルが手助けしてくれるかもしれません。低濃度のSSRIは、起こりうる性衝動を抑えてくれます。
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