GID/FTM・MTFにとって、ホルモン治療と外科的治療は、生殖能力の可能性をなくしてしまう。生殖医療をするかしないかまだはっきりしない若い時期に、GID/FTM・MTFたちは、性適合手術(SRS;特に、卵巣摘出、精巣摘出)をする傾向にある。

World Professional Association for Transgender Health(WPATH)の最近の標準的治療では、治療を始める前に、将来的な生殖医療のオプションについて当事者に知らせるように推奨している。

このレビューでは、GID/FTM・MTFにおける生殖医療の最新の知見、最先端科学技術について述べる。

性適合手術(SRS)、睾丸摘出は、確実に不妊になる。一方、ホルモン治療は男性化、女性化する上では重要性を持つが、生殖能力の観点からは、可能かもしれないが生殖能力はなくなる。

GID・FTMにおいては、最近の受胎能のオプションとしては、胎芽(8週までの受精卵)卵母細胞の冷凍保存、卵巣組織の冷凍保存がある。GID・MTFにおいては、精子の冷凍保存、外科的に精子を抽出、睾丸を冷凍保存することは可能。

生殖能力を保存する技術は、生物学的な規則(倫理的な問題を含め)に基づき標準化することで適用できるが、最終的には、
すべての可能な選択肢以外の説明も含め、当事者になにがふさわしい技術なのかを決めなければいけない。

※コメント
2016年と一番ホットな話題でしょうか。
もう海外は、1歩も2歩も進んでいます。日本では、普通の人たちの生殖医療でさえ、法の整備も進んでいない状態です。今の若いGID/FTM・MTFの生殖医療となると、当事者がかなり年を取ってから、実現することなのかもしれませんね。

当院に来院されている方の中にも、生殖医療に興味がある方がたまにいらっしゃいます。
MTFでは、女性ホルモン治療する前に、精子を冷凍保存するにはどうしたらいいか?FTMにおいては、男性ホルモン治療する前に、卵子を保存するにはどうしたらいいのか?

このように、なかなか現状では難しいと思われる点は、まず、このような細胞などを冷凍保存する医療機関が少ないこと。民間医療機関では将来的にはどうななるか不安ですし(その医療機関自体が将来的に止めてしまうこともあるでしょう)、大学病院が一番よいのでしょうけど、まずこのような案件は受付けてもらえない。

精子の冷凍保存をしているある大学病院に依頼すると、GIDだというと拒否なんて事案もあります。交渉次第なのかもしれませんが、自分も含めてですが、もっと他の医者にもGIDのことを啓蒙していく必要もあるのでしょう。頑張ります!

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今回の海外医学論文…
Fertility options in transgender people
Int Rev Psychiatry. 2016;28(1):112-9