執筆者:性同一性障害(GID)学会認定医 大谷伸久

エストロゲンは、プロラクチン分泌を促す。エストロゲン投与は、プロラクチンの生成、放出を促す。そして、長期に及ぶとプロラクチン細胞が異形成になる。

いく人かの女性にとっては、外因的なエストロゲン(身体で作られない)がプロラクチン細胞により感受性があり、プロラクチノーマの大きなリスクの要因となるかもしれない。そして、男性にもそれが当てはまるかもしれない。

女性ホルモン治療する前のプロラクチンの血中濃度とプロラクチノーマの相関関係はわからないが、エストロゲン投与前にプロラクチノーマはなかったように思われる。

エストロゲンを多く投与していた間の10か月は、プロラクチンが上昇していった。エストロゲンを中止した後もプロラクチンは上昇した。プロラクチノーマの診断によりブロモクリプチン治療を開始した。5か月後にCTにて縮小し、エストロゲン血中濃度が正常にもかかわらず、プロラクチン血中濃度は上昇した。

そのため、患者の高プロラクチン血症は、プロラクチン細胞の異形成でなく、プロラクチノーマによるものだと思われた。エストロゲンが正常値にもかかわらずブロモクリプチンを中止した後もプロラクチンは上昇した。ブロモクリプチンを投与している6か月はプロラクチンの上昇はなかった。

女性ホルモンを投与している間、高プロラクチン血症であったが、ドーパミンのコントロール下にあった。(ブロクリプチンで反応があったので)

結論としては、女性ホルモン(エストロゲン)を投与しても普通の量であれば、プロラクチノーマのリスクは低いと思われる。今回の症例の患者は、女性ホルモンの投与量が多かった結果としてなのかもしれない。他のひとより、女性ホルモンが腫瘍に感受性があったのがどうかを確かめるのは難しい。
Estrogen-Indeuced Prolactinoma in a Man
J.Clin End 68(2)444-446
※コメント
女性ホルモン(エストロゲン)の量が多くなると悪いことは多く生じても、いいことはあまりないのでしょう。プロラクチノーマだけでなく、肝機能の悪化、血栓を生じる可能性も高くなるなどの合併症の率が高くなってしまいます。
総じて、MTFのひとは、女性ホルモンを多く入れたがる傾向にあるので、注意しましょう。

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