背景:
GID/FTMは、SRS後にも男性ホルモン治療をしなければならない。たいていのGID/FTMは、男性ホルモンの筋肉注射をしている。

このアンドロゲンは、一部体内でアロマターゼという酵素でエストラジオールになるものの、エストロゲンの血中濃度を下げる働きをする。その結果、GID/FTMの男性ホルモン血中濃度は、卵巣摘出後や普通の男性と同じ血中濃度の範囲内にある。
※アンドロゲン:男性ホルモンの一般総称。

性ホルモンは、一生のうち、骨格の成長、最大骨量、そのあとに続く骨減少に大きな影響を与える。エストロゲン、アンドロゲンが二次性徴に不足すると、骨量が低くなり、その後骨減少が増加してしまう。

トランスジェンダーへの別性ホルモン治療による骨への影響は、各々違いがはっきりしている。GID/MTFでは、エストロゲン投与により骨代謝は促進され、骨量が減少しないことが示されている。
では、GID/FTMではどうか?

目的:
エストロゲンがなく(SRS後)男性ホルモン(テストステロン)治療をしているGID/FTMは、骨量が減っているのか?減っていたとしたら何らかの方法で骨の質を保っているのだろうか?

対象:
男性ホルモン治療をしているGID/FTM15人の腸骨からの生検で骨組織を調べる研究。男性ホルモン250㎎/2週間または、男性ホルモン経口薬を飲んでいる平均年齢30歳のGIDのFTMを対象にした。対象のGID/FTMは、卵巣を摘出している。男性ホルモンの治療期間は、1~10年。
※腸骨:腰の骨。男性ホルモン経口薬:少し古い文献なので、現在はあまり使われていないです。

骨生検した組織は、8人の閉経女性と健康だった突然死の11人の男性と比較した。

GID/FTMの骨組織の特徴は、正常な性腺機能の男性ホルモン濃度より低い組織像で、かつ正常な性腺機能の女性ホルモン濃度が低い組織像を示した。

骨密度は、予期した値であった。皮質骨は、他のグループより厚かった。海綿骨は、他のグループとほぼ同じだった。骨代謝マーカーの骨形成マーカーは、他のグループより低かった。骨表面のびらん(少し荒れている状態)は、閉経後の女性より目立たなかった。
※骨形成マーカー:骨代謝の度合いがわかる。骨形成のマーカーの値が低いと骨代謝が低い=骨が弱い。

結論
GID/FTMの骨は、骨回転が低くいが、海綿骨が維持されている。1つの仮定だが、GID/FTMは、エストロゲンがないことにより、男性ホルモンが骨を保護していると考えられる。皮質骨が厚かったのは、男性ホルモンのおかげと考えられる。

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The effect of androgen treatment on bone metabolism in female-to-male transsexuals.
J Bone Miner Res. 1996 Nov;11(11):1769-73

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