女性は痛風になりにくいが、FTMは痛風になることもある!?

尿酸値が高くなると、いわゆる「痛風」になりやすいとされますが、通常女性には起きにくく、女性ホルモン(エストロゲン)が関与しているのではないかと考えられています。閉経後の女性は、女性ホルモン(エストロゲン)がなくなるため、尿酸値はふつうに高くなってきます。そのため、閉経後は、女性でも痛風になることがあります。

男性の尿酸値は、同年代の女性に比べ高い。おそらく、女性は、腎臓での尿酸の排泄率が高いため、尿酸を外に多く排出するからだと考えられている。これに関与しているのが女性ホルモンとされ、女性は女性ホルモンの値が高いことが理由と思われるが、実際のところよくわかっていない。

また、尿酸に対する腎臓の機能は、インスリンが直接関係しているのではないか、とする研究もある。これらの疑問を明らかにできるかもしれない非常に適したモデルが、性ホルモン治療を受けている性同一性障害(トランスジェンダー)の生理的機能かもしれない。

今回の研究は、性ホルモン治療を受けている性同一性障害(トランスジェンダー)の性ホルモンによる尿酸値への影響と腎臓における尿酸の排泄率を性同一性障害のMTF、FTMで検討をした。(MTFは、別記事で)

FTM47人を対象にした。最初の1年間は、FTMの93%が2週おきにテストステロン・エナント250mg、7%がテストステロン・パッチ5mg/日を投与していた。2年目には、テストステロン・エナント70%、テストステロン・パッチ30%をそれぞれで治療した。

注射後、7日目にテストステロド血中濃度、尿酸値、クレアチニン、血糖、インスリンを測定。

FTMにおいては、男性ホルモン(テストステロン)の量、値、尿酸排泄率との間には明らかな関連性が見いだされなかった。おそらく、使用する男性ホルモン濃度が同じで、ある特定の時点での男性ホルモン血中濃度が、注射する時期だとは限らないからかもしれない。

FTMは、尿酸排泄率が低く、尿酸値が上がりやすくなる

男性ホルモン治療後に、女性ホルモンが低下することにより、尿酸排泄率が低下し、それに伴って尿酸値が上がる。ある報告では、男性ホルモン治療後に、インスリン抵抗性が低くなるとしている。しかし、健康な生物学的女性における男性ホルモンの増加が、高インスリン血症、インスリン抵抗性を引き起こすことを説明できなくなる。

結局、FTMの尿酸値が高くなることと、尿酸排泄率が低下することは、インスリンによるものではないと思われる。むしろ、男性ホルモンまたは、エストロゲン低下による2次的なものによると考えた方がよいだろう。

今回のポイント
*FTMは、男性ホルモン治療を行うと、女性ホルモンが減少するために尿酸の排泄率が悪くなり、尿酸値が高くなる傾向になる。
*FTMの男性ホルモン治療されている場合は、一応、尿酸値を気にするようにしてみましょう。

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☞今回の医学論文
Effect of Long-Term Administration of Cross-Sex Hormone Therapy on Serum and Urinary Uric Acid in Transsexual Persons
J Clin Endorinol Metab,2008.93(6):2230-2233