性別違和(性同一性障害)を伴う思春期時において、ゴナドトロピン抑制ホルモンによって二次性徴に関する支障を抑制することができる。よって、将来の性の選択を引き延ばすことができる。

性別違和(性同一性障害)における二次性徴を抑えた結果に対しては、限られた研究しかない。また、精神的サポートが、性別違和を持った思春期の健康状態に対してどのように影響するか研究がない。今回は、イギリス医学チームからの研究報告。

今回の目的
精神的サポートと二次性徴を抑制したのち、性別違和(性同一性障害)を伴った思春期の精神的、肉体的なトータル機能について評価する。

対象
200人の性別違和の人たちを対象。初診時から6か月おきに、性別違和(性同一性障害)を伴う思春期の精神的、肉体的なトータル機能を評価した。

方法
Utrecht Gender Dysphoria Scale※(UGDS)、性別違和(性同一性障害)に関する支障を自己評価レポート、ならびに、Children’s Global Assessment Scale(CGAS;標準化した指標を基に子どものメンタルの健康状態を見る。100点満点で点数が高いほどよい)を使い評価した。

結果
なにもしていない状態では、性別違和(性同一性障害)を伴った思春期時には、CGASの点数の平均は57.7±12.3 と精神的、肉体的なトータル機能は低かった。精神的サーポートをして、6か月後には精神的、肉体的なトータル機能は明らかに改善した。60.7±12.5で有意差あり。

12か月間二次性徴抑制ホルモン治療を受けた人たちは、精神的サポートのみを受けた人たちに比べて精神面は明らかによりよい結果となった。

精神的サポートと二次性徴抑制ホルモン治療は、性別違和を伴った思春期において、精神面では改善する。これらの相互作用は、性別違和(性同一性障害)を伴う思春期において、心理社会的な機能の違いを管理する上で効果があると考えられる。

考察
性別違和(性同一性障害)を伴う思春期において、精神的サポートすることは心理面でよりよい効果がある。精神的に問題がある場合にはとくに効果がある。さらに、二次性徴を抑えると、さらに改善する。

最終的には、精神的サポートを二次性徴抑制ホルモン治療を受けると、精神的、肉体的なトータル機能は、思春期を通じてよりよく改善する。

性別違和(性同一性障害)を伴った大人については、治療と手術は、医学管理上で効果のあるものとして必要と考えられている。これらの治療は、肉体的な外見を変えたりして、元に戻るものもあれば戻らない治療もあるが、精神的な健康状態を改善することが示される。

性別違和(性同一性障害)を伴う思春期には、自認する性と外見の性が異なっていると意識するので、一時的に心理的な問題を抱えることが多い。思春期前に、継続的な二次性徴抑制ホルモン治療を行うことは、完全に後戻りできる治療とされる。

このことは、基本的に子どもの利益になり、自我が芽生える前までを反映する時間を稼ぐことができる。その間に、別性としての洋服を着たり、別性の振る舞いなどをする実生活をすることもできる。その結果、希望する性に変えるか変えないか決めることもできる。

自認する性と正反対の身体の成長するのを抑えることは、性別違和(性同一性障害)を伴う思春期時には、その後の性の変更がスムーズに希望する性別の役割に移行できる。

このスムーズな性別の移行は、自分の気持ちの改善、学校でのさまざまな点で、多くの改善をもたらす。これらの結果は、矛盾することなく、性別違和(性同一性障害)を伴った思春期時には、二次性徴の抑制は、精神的な健康状態をもたらす。

精神的なサポート6か月後に、思春期時の性別違和(性同一性障害)が改善したことについては、異なった解釈がある。
1.精神的な健康状態に反映し、心理社会的な問題が時間的に解決された。
2.二次性徴が程よい時間で終わり、彼らにとって必要なことと彼らの別性を受け入れることによる障害の軽減で、性が一体化された。
3.二次性徴抑制することの本質は、障害を軽減するにあたって、それ自体が心理的に意味のあることであるかもしれない。

MTFは、FTMに比べて、精神的、肉体的な機能は劣るけれども、医学的アプローチすることにより改善していく。MTFがFTMより社会的に適応しにくいと考えられているのなら、より深刻である。

興味深いことに、FTMはMTFより、より性別違和(性同一性障害)に支障を来しているとする報告がある。すでに報告があるように、乳房が大きくなること、生理が来ることを平均15年経験したほとんどのFTMは、かなり高い頻度で支障を持つとされている。

結局、MTFとFTMは、分けて考える必要がありそうで、違った見方が必要である。

イギリスでは、このような典型的な性別違和(性同一性障害)に対しては、12歳の時点で二次性徴抑制ホルモンを投与することが望ましいとされている。二次性徴を抑えるのに望ましい年齢なのに、年齢がいってしまうと二次性徴抑制ホルモン治療で恩恵を受けるメリットが大きく損なわれる可能性がある。(ただし、比較対象はしていない)

いつも読んでいただきありがとうございます。

にほんブログ村


にほんブログ村

☞今回の医学文献は
Psychological Support、Puberty Suppression, and Psychosocial Functioning in Adolescents with Gender Dysphoria
J Sex Med 2015;12:2206-2214

※Utrecht Gender Dysphoria Scale
以下の項目の質問に対して、 1まったく同意できる、2いくらか同意できる、3どちらとも言えない、4いくらか同意できない、5まったく同意できない。性別違和(性同一性障害)の診断にも用いられる。

FTM
1)男の子のように振る舞うのを好む
2)いつも誰かが女の子のようにするように示唆する。とても胸が痛くなる。
3)女の子として生活するのが好き
4)常に男の子のようになるようにしている
5)男の子の生活は、女の子の生活よりより魅力的だ
6)女の子のように振る舞わなければならないのは、不幸せに感じる
7)女の子として生きるのは、何かポジティブに感じる
8)鏡で自分の裸を見るのは楽しい
9)女の子として性的振る舞いをするのが好き
10)女の子として感じる生理は憎い
11)乳房を持っていることが憎い
12)男の子として生まれたかった