執筆者:性同一性障害(GID)学会認定医 大谷伸久

性同一性障害のホルモン治療とヘマトクリットとの関係

表題に「ヘマトクリット」と聞きなれない言葉がありますので、まずはこの用語の説明をしましょう。

Key word:ヘマトクリットとは?
    • ヘマトクリット値(ヘマトクリット、hematocrit)とは?

ホルモン治療前には、おそらく説明をされていると思いますが、FTMの場合には、男性ホルモン治療を開始すると少なからず、赤血球が増えてきます。MTFの場合は、あまり問題視されないので説明はあまり受けないかと思います。

今回の医学論文は、FTM、MTFそれぞれが、ホルモンの種類(形状)によって、ヘマトクリットがどのように変化するのかを調べて、報告したものです。

FTM、MTFのそれぞれが、男性ホルモン、女性ホルモンの治療をしますが、各ホルモンに対しての副作用も違ってきます。

MTFの女性ホルモン治療に対する副作用

FTMの男性ホルモン治療に対する副作用


もっとも変化を来すものの1つは、ヘマトクリットとヘモグロビンである。

MTFは下がる傾向にあり、FTMは上がる傾向にある。

これらの変化のほとんどが生理的基準内であるが、検査結果通りに、その本来の生物学的性のホルモン値に照らし合わせると、しばしば異常な値として報告されてしまう。(生理的基準値内に収まらなくなる)

この研究報告は、ホルモン治療後のヘマトクリット値の変化を評価すること、さらに、FTMにおいては、男性ホルモンの種類(形状)により、ヘマトクリット値が多血症に対してどのような危険性あるいは安全性があるのかを評価することである。

対象者
FTM:285人
男性ホルモン治療285人の内訳
・テストステロン・エステル44人(22.9%):短期型:エナルモンデポー、テストロンデポー、テスチノンデポーなど)
ネビド109人(56.8%):長期型
・テストステロン・ジェル39人(20.3%)

MTF:239人
女性ホルモン治療340人の内訳
・エストラジオール筋肉注射149人(62.3%):ぺラニンデポー、プロギノンデポーなど
・エストロゲン・ゲル4人(1.7%)
・エストロゲン・パッチ86人(36%)


☞今回の医学論文は?
Prospective evaluation ofhematocrit in gender-affirminghormone treatment: results fromEuropean Network for theInvestigation of GenderIncongruence
ANDROLOGY,2018,6,446-454

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