GID/MTFは、女性化のために女性ホルモンが必須となる。女性ホルモンの合併症としての静脈血栓は、経口投与(飲む薬)の1年間の間に起こりやすい。

静脈血栓の発生頻度は、2~6%と言われ、通常の若年者の発生頻度は、0.005~0.01%である。その1~2%のケースで肺塞栓で死に至る。

GID/MTFで女性ホルモン投与の静脈血栓の発症率は、女性ホルモン投与している閉経後の女性の2,3倍である。(60歳以上のホルモン療法を受けている静脈血栓の発症率は、0.1%である)

さらに、大手術、骨盤手術を受ける多くの若い人たちより絶対的に高い頻度で発症する可能性がある。

いくつかの過去のケースレポートによると、45人のうち1人だけが、経口エストトロゲンより経皮(テープまたは、塗り薬)投与で静脈血栓を発症したが、過去に経口エストロゲンを投与中の静脈血栓を発症したことのあるケースだった。

この投与方法の違いによる静脈血栓の発症は、他の研究からもよく分かっていないところが実情。

アンチトロンビン欠損は、エストロゲン投与により静脈血栓が起きやすいとされてるが、使用中は相対的リスクが低いとされている。

このリスクは、ホットフラッシュや骨粗鬆症といった病的状態に不適切に使うことにより高まる。ワーファリン(血液を溶かす薬)の治療を受けている場合も、相対的リスクが低い。

プロテインC、プロテインSアンチトロンビンⅢそして、凝固因子Ⅴの欠損を持っている人に対しての静脈血栓のスクリーニングは有用ではあるが、GID/FTMにとっては有用ではないし、一般的には推奨されない。

大手術する予定であった場合には、エストロゲン投与は中止すべきである。とくに、経口投与はなおさらである。

※コメント
エストロゲン経口投与は、現在でも推奨されていません。

GID/MTFの中には、女性ホルモン経口薬を自己判断で内服しているケースが多々見られます。とくに、女性ホルモンは、個人輸入できるので、簡単に手に入るという理由もあるのかもしれません。

中には、よくなにもなく無事に過ごせたなと、ありえないぐらい服用している場合があります。少し古い海外医学文献では、女性ホルモンのエチニル・エストラジオールで治療しているケースがしばしば見受けられます。

当ブログでも、過去の医学文献にこの薬を投与して治療している場合が多くみられます。ただし、このくすり自体に静脈血栓を高頻度に発症することがわかってきたので、2001年から投与すべきでないと変わってきています。

この点もその都度、注意コメントはしますが、今後読んでいく上で注意してください。
いつもありがとうございます。

海外医学参考文献
Endocrine intervention for transsexuals
Cli Endocrinology 2003 59,409-418
静脈血栓の項目より