執筆者:性同一性障害(GID)学会認定医 大谷伸久

FTMでの男性ホルモン治療による声の男性化に対しての影響、声の問題、声の満足度の研究報告

方法

50人の18~64歳までのFTMを対象にした。男性ホルモン治療前、治療開始後3,6,12か月の時点での声のデーターを得た。28人が18,24か月後にも参加してくれた。
声の振幅をデジタルオーディオで基本周波数と音圧のデーターを解析した。同時に、男性ホルモンのデーターと当事者への声に関する質問、問題点に関して記録した。

結果

・基本周波数は、3,6,12か月後ごとに低下していた。
・3か月後には、平均192Hzから155Hzまで下がり、最終的に12か月後には125Hzまで下がった。
・12か月時点で声の変化はなくなった。
・12か月後には個人差はあるものの、平均125Hzまで下がった。音圧レベルは、大きい変化はなかった。
・24人の感想として、声の症状として、声の不安定さ、疲れ、ボイスセラピーが必要なひともいた。
・基本周波数は、男性ホルモンの血中濃度とに相関関係はなかった。男性ホルモンの種類を変えても効果は変わらなかった。

結論

男性ホルモン治療を行ったFTMの声に対する調査では、ほとんどが満足得るものであった。しかしながら、十分に効果がなく、ボイスセラピーを行った人もいた。男性ホルモンをしている間、統合的な声のアセスメントも必要なのかもしれない。

声帯と声について

声帯は、息の流れによって振動することで声が出ます。この声帯の振動の範囲を基本周波数F0といいます。
通常の振動数は100~200Hzで、1000Hzぐらいまで振動が可能です。
発する声が違っても、基本周波数F0は、ほとんど変化がなく一定です。
耳に聞こえる声の高低は、基本周波数によって決まり、基本周波数が低いほど、声が低くなります。
普通の男性の平均値は、85~155Hz、女性の平均値は、165~255Hzです。

ポイント
1 個人差は、あるものの男性ホルモン治療後12か月で男性とほぼ同じ周波数になった。
2 男性ホルモン治療後、最も変化があったのは、最初の6か月目であった。
3 何人かは、最初の1年でボイスセラピーが必要なこともある。

【FTMの男性ホルモンによる声の低音化に関する記事】
FTMの男性ホルモンによる声の変化②
FTMの男性ホルモンによる声の変化③

今回の英医学文献
Effects on Voice Fundamental Frequency and with Voice in Trans Men during Testosterone Treatment-A Longitudinal Study.
J Voice.2015 Dec8,pii;1997(15)234-9

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