背景
GID/FTM・MTFにおいて、短期間のホルモン治療と影響についての記載は以前よりあるが、長期に及んでのそれらはあまり知られていない。
方法
100人のGID/FTM・MTFを対象にし、性適合手術を受けたもの、そして、平均10年のホルモン治療を行っているものを対象としている。
ホルモン治療年数と人数(グラフ横:人数、グラフ縦:ホルモン年数、transsexual women:MTF、transsexual men:FTM)
すべてのFTMは、男性ホルモンを約10年投与、3人のMTFが過去に静脈血栓のため女性ホルモンは投与していなかった。

FTMの使用していた男性ホルモンの種類
・テストステロン・エステル250㎎(2~3週に1回)35人
・ネビド 7人
・テストステロン・ジェル50㎎ 7人
・テストステロン経口薬+テストステロン・ジェル50㎎ 1人

MTFの使用していた女性ホルモンの種類
・エストロゲン・ジェル 22人
・エストロゲン・パッチ 3人
・エストロゲン経口薬 19人
・エストリオール 1人
・エチニル・エストラジオール 2人

結果
心血管系疾患(心筋梗塞など)、ホルモンに関係するがん、骨粗鬆症のような副作用は、GID/FTMにはいなかった。反対に、GID/MTFの1/4(25%)には、骨粗鬆症が認められ、さらには、女性ホルモンを平均11.3年行ったている6%のGID/MTFに静脈血栓症、他に6%のGID/MTFに心血管系疾患を経験していた。

心血管系疾患を患ったGID/MTFは、おそらく、年を取っていた、エストロゲン治療、そして、生活様式に関連しているかもしれない。心血管系疾患の発症を減らすには、女性ホルモンを行っている間は特に注意を払う必要がある。

今回の研究で使われたホルモン剤及び効能
MTFの場合
・cyproterone acetate 50~100mg (リアル・ライフ・テストをしながら)
アンドロゲン受容体に作用し、LH卵胞刺激ホルモンの抑制とテストステロン分泌を抑える作用がある。黄体ホルモンと弱いステロイド効果あり。

・6か~1年を経て、上記の薬に女性ホルモンを投与する。40歳以下には、1日4㎎のエストラジオール、40歳以上には、エストロゲン・パッチもしくは、ジェルを使用が推奨される。

FTMは記載なし。

・性適合手術をした後は、ホルモンがない状態にある。今のトランスジェンダー世代には、この長期の経過データと副作用については、ほとんどない。また、現時点でのホルモンの適正量はよくわかっていないのが実情。

ただ、最近のホルモン治療の使い方としては、ホルモン欠乏している人に準じて治療し、生理的範囲内のホルモン濃度を保つのがよいとされる。FTM、MTFともにホルモン濃度が生理的範囲内をずっと超えてしまうと、血栓を引き起こす可能性が高くなる。

限られたエビデンスに基づくと、LHが正常範囲内であると、適正なホルモン濃度かもしれない。

・エチニル・エストラジオールは現在ほとんど使われていない。(血栓ができやすいとされるため。日本の商品名は、プロセキソール)

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Long-Term Evaluation of Cross-Sex Hormone Treatment in transsexual Persons
J Sex med 2012;9:2641-2651 (abstract)